誰でも大好き

DD。つんく♂教。

宮本佳林 LIVE TOUR ~Karing〜感想

※レポではなく感想です。

 

10月23日、Zeppなんば大阪で宮本佳林ちゃんのソロライブを観た。凄かった。これほどのライブに巡り合うことは、人生でもう何度もないかもしれない。歌って、こんなにも心を動かされるものなのか。最高にかっこよかった。アイドルには、人間には限界なんてないと思った。

 

Juice=Juiceはハロコンで見ることがほとんどだったけれど、一言だけのパートにも一曲分以上の情報量を込められるかりんちゃんが、ライブまるまる一本をひとりでやったらどうなるんだろうという興味で申し込んだ。実際には「どうなるんだろう」なんて悠長なことを考えている余裕はなかった。その卓越したパフォーマンスと、迸る生命力に押し流されてしまった、全て。


曲ごとに違う表情になるどころか、まるで別人で、それぞれに完成された世界を体感させてくれる。スターツアーズからウエスタンリバー鉄道、シンデレラ城にエレクトリカルパレードまでなんでもあるディズニーランドみたいに。ディズニーランドを擬人化したのがかりんちゃんだと思った。


どんな人物を描いた曲を歌っていても、「演じ分ける」とか「器用にこなす」とかに留まらず、都度、活き活きと血の流れる、重力のある実体としてそこに立つかりんちゃん。かりんちゃんらしい、らしくないなんて線引きは意味を持たなかった。全てがかりんちゃんの内にあった。どんな世界観にも対応できる表現力があれば、当て書きは必要ないどころか余計なお世話ですらあるのかもしれない。


私は普段は良い意味でも悪い意味でも歌詞が気になるタイプなんだけれど、この日はそうならなかった。歌詞をメロディ付きの文章として受け取るというより、かりんちゃんが歌詞をもとに作り上げた世界を楽しむという感覚。歌詞はあくまで設計図で、こちらは設計図そのものではなく完成した建造物を見るような感じというか。例え救いのない歌詞でも、かりんちゃんが歌い上げることで魂に寄り添う歌になる。


もしもこの20年間のハロヲタとしての記憶をすべて失っても、このライブを見たら、こんな凄い子が存在するんだ、ハロプロの子なんだ、と感動してハロヲタになったと思う。というか、見ている間は本当にハロプロという文脈のことを忘れていた。あの小さかったかりん様が…とか、不遇な時期を経て…とか、グループに所属しながらソロライブは史上初で…とか、そういうパフォーマンス外のことは完全に頭から消えていた。ひたすらに目の前のステージが最高だった。


かりんちゃんが生まれてきてくれたこと、アイドルになってくれたこと、これまでアイドルでいてくれたこと、そして今、最高のステージを見せてくれたこと。全てに感謝の気持ちしかない。かりんちゃんを生み育てたこの世界に感謝……


・私が言う前に抱きしめなきゃね 

かりんちゃんが登場してまず、とにかく可愛いのにびっくりした。ピカピカに輝く頰、黒く濡れた瞳、ふんわり内巻きにした髪、ふわふわの手足、真っ白なアイドル衣装。クリーミーマミだ!となった(世代)

そして歌が上手い、声がいい。リズム感の良さなのかなんなのか、聴いていてやたら気持ちがいい。挑発的な微笑みにゾクゾクして、間奏では一転して弾むような笑顔にわくわくして、まるで心を操られているようで戸惑った。こちらに恋心がなくても、こんなに気持ちが引っ張られることがあるのか。


・大人の事情

こんな歌だったのかと息を飲んだ。ドラマも全部見たし、何度も聴いたことのある曲なのに、これほど切実な心情が描かれているだなんて知らなかった。こんなにも恋にのめり込んで、こんなにも強く大人に苛立ちをぶつける少女がそこにいたとは。「大人の不条理 目をつぶってきたのに この恋 認めてよ」がまだ胸に刺さっている。曲の世界に引きずり込まれて、狡い大人として糾弾されたような痛み。


・愛のダイビング

からの、豪速球でかっこよさをぶつけられて面食らう。歌声に疾走感?があって、風を切っているよう。爽快そのもの。ここまでの3曲で既にもう、ライブが終わっても何の文句もないぐらい満足感があった。3本立てのオムニバス映画を観たぐらいの情報量。


・氷点下

微笑んでいるのに泣いている、という表情が存在するのだという驚き。なんだか毎曲なにかしらに驚いているな……。かりんちゃんが曲の主人公に見えるだけでなく、私まで遠距離恋愛がうまくいかない少女になってしまい、寂しくて悲しくて泣いてしまった。アラフォー子持ちなのに。曲の世界観を見せるだけじゃなくてその世界に引っ張りこむことができる、これが表現力……。山崎あおいさんのシンプルな歌詞は、かりんちゃんの豊かすぎるほど豊かな表現力とのバランスがいい気がする。


・タメライ

触れれば砕け散るガラス細工のような少女だった「氷点下」から、突然ラテンでタフなお姉さんに……抑え目の曲調でかっこよかった。このあたりからかりんちゃん像みたいなものを探すのを諦めた。次々と提供される短編映画に身を委ねるのみ。

作曲:馬飼野康二と書いてあったような気がするけど気のせいかもしれない。


・Only Chance

恥ずかしながら恋するハローキティは未履修なので、家族と恋人の間で揺れる、人魚姫的な曲だと思って聴いていた(帰ってから調べた)。劇中歌なのに単体で歌ってあらすじが伝わる演技力すごいな。


・最高視感度

恥ずかしながらコピンクスも未履修だったので衝撃を受けた。これが噂の!すごい!すごい透明感と無重力感!歌声がキラキラに煌めいていた。これは数日経ってから考えたことだけれど、アニメーションのキャラとしての歌だからあんなに透き通る声で歌っていたんだろうか。


・初めてを経験中

か、かわいい。めちゃくちゃかわいい。安定感と安心感。いわゆるハロプロ的可愛さの完成形という印象。Juice=Juiceの曲を歌う時、心なしか客席へのまなざしが優しい。Juice=Juice推しの人たちと相互に愛情をやりとりしている感じがする。


・幼少期の写真紹介コーナー

すごくナチュラルな、家庭の中での写真が選ばれていた。親が選んだであろう服から、成長するにつれて本人の意思、「可愛くなりたい」気持ちが表れた服に変化していく様子が見てとれた。可愛い柄と可愛い柄を重ねちゃう、ビーズのブレスレットをむやみにつけちゃう、お子様ランチのおまけみたいなティアラをつけちゃう、幼い日のおしゃれ心の芽生えが、アイドルへとつながっていく流れにぐっときた。


・駐車場のお姉さん

ご本人の作詞作曲ということもあってか、声が魅力的に響く音域で構成されているように感じた。柔らかく温かい歌声。コミカルじゃないのも聴いてみたい。(これはオチが私にはちょっと難しく、ウケ損ねた)


天使のウィンク

めちゃくちゃ良かった。曲自体がさすがに強い。松田聖子カバーアルバムを出してほしい。あと、かりんちゃんのアプローチも、誰かに寄せるかたちをとるからか、持ち歌とは違う雰囲気があって、ライブ全体の中でよいアクセントになっていたと思う。


恋☆カナ・ミニモニじゃんけんぴょん

恋☆カナ好きすぎて無意識に振りコピしてしまった。フルが聴きたい。


・カリーナノッテ

無垢さと包容力を併せ持った少女という、アイドルの根底にあるファンタジーを、本人の年齢的な幼さによってではなく、歌の技巧で描き出せるというのは、本当に稀有なことだと思う。年月とともに失われていかない、むしろ磨き上げられていくものとして愛でられる。希望でしかない。


・ロマンスの途中

かっこよすぎて興奮しすぎてよく覚えていない。王。


・若者ブランド

やたらとキャッチーなメロディに、流行りっぽい歌詞。メッセージのインパクトが強くないのも、それはそれでかりんちゃんの歌自体のかっこよさが際立つように感じた。


・少女K

私はエンドロールに名前も出ない脇役、みたいな歌で、いやさすがに本人とギャップがありすぎるだろう、と思ったのは最初だけで、醒めた目つきとやさぐれたオーラに、ああ私が知らないだけで、かりんちゃんが脇役の世界も存在するんだろうな……と謎の納得に至った。ダンスも含め乾いた空気感がかっこよかった。でも最後の人文字「K」は何?


・どうして僕らにはやる気がないのか

サビの歌声は強く訴えかけるようで、胸の奥を抉られるのに、間奏で見せる完全な虚無の表情。あまりに無なのでハッとなる。そのコントラストで歌詞がより切実に響くように思った。もう相当な曲数を聴いたはずなのにまだ知らないかりんちゃんがいる。

 

・CHOICE&CHANCE

魂を燃やし尽くすようなパフォーマンスだった。正直、もう声には疲労の影も見えたんだけれど、それさえも魅力に変わるような。これは多分、生で見てこその迫力だったんじゃないだろうか。

 

・落ちこぼれのガラクタだって

「ライブのラスト」というテイストの曲。ちょっとその前の曲で呆然としていたのを優しくクールダウンしてくれた。


・銀色のテレパシー

優しい歌声。柔らかく包まれているような、甘やかされている、という感覚。こんなに優しくしてもらっていいんだろうか。

パフォーマンスとは関係ないんだけれど、「氷点下」はこれと対になる曲なんだろうか?「風邪流行ってるよ そっちではどう?」「私ならここで元気」あたりを彷彿とさせる描写が多くて気になった。

 

・「ひとりで生きられそう」って、それってねえ、褒めているの?

思い出しても血がたぎるようなかっこよさだった。こんなスリリングな曲だった?私は全然音楽について詳しくないけど、あれがロックっていうやつなんじゃないだろうか?音楽のうねりに、かりんちゃんの体温に巻き込まれて、高揚感に支配されて自分が自分で無くなるような。最高のエンディング。